『ヒーローショー』

ヒーローショー

暴力の果てには…『ヒーローショー』

ヒーローショー | Movie Walker

30代から味わう邦画
井筒監督の名作と言えば何と言っても『パッチギ!』でしょう。
しかし、この作品の影に隠れがちですが、2010年に公開された『ヒーローショー』も優れた作品です。作品全体のバランスはよくありませんが、「暴力」について考えさせられる何かがあります。

<『ヒーローショー』…あらすじ>
いつも2人でつるんで悪さをしていた、男子高校生のマサル(金子賢)とシンジ(安藤政信)。ある日の出来事を境に、彼らはヤクザとボクサーという別々の道を進み始める。一度は栄光をつかみかける2人…しかし、運命は彼らを見放す。月日が流れて大人になった彼らは、再会して、母校のグラウンドで自転車に2人乗りしながら、会話を交わす。

お笑い芸人を目指しているユウキ(ジャルジャル・福徳秀介)は、かつてのコンビの相方に誘われて、ヒーローショーの端役を務めることになる。しかし、バイト仲間の1人が相方の彼女を寝取ったことから、内輪もめに。お互いが自分たちの悪友を呼び寄せて、元自衛隊員の勇気(ジャルジャル・後藤淳平)も混じり、後に引き返せない大ゲンカへと発展する。エスカレートする暴力…そして、ついに殺人事件が起きてしまう。

<バットで殴れば人は死ぬ>
この作品では、序盤で、ある男がバットで頭を殴られて命を落とします。そこで少年たちは犯した過ちに気付き、狼狽するのですが、時すでに遅し。当然のことながら、死んだ人間を生き返らせることはできません。
マンガやアニメでは、しばしば瀕死の重傷を負った人物も、奇跡的な生命力を発揮して復活することがあります。しかし、現実と虚構は違います。頭でバットを殴られれば、当然人は生命を脅かされることになります。そして人を殺した人間には、重い罰が科せられます。そんな当たり前の「現実」を、これでもかと言うほど克明な描写で描いた作品です。
この映画を見ると、暴力がいかに非生産的な行為かを思い知らされます。殴られたらやり返す…そんな報復は、何も生むことはありません。大きなものでは戦争から、家庭内の些細な諍いまで、争いを繰り返す人間たちに対する「NO!」を、この作品は唱えています。

<名俳優じゃなくても…>
主演を演じたジャルジャルの2人は、お笑い芸人として活躍しています。しかし、井筒監督の熱心な演技指導もあってか、本職の俳優たちに勝るとも劣らない素晴らしい熱演ぶり。実際、この作品にはそこまで有名な俳優は出演していません。映画は、たとえ名俳優がいなくても、脚本とカメラさえあれば撮れる、という基本的なことに気付かされます。
ただ殴る蹴るだけではないバイオレンス映画が見たいならば、ぜひ『ヒーローショー』をご覧になってください。30代と言えば、教職についている人もいるかもしれません。子どもたちに「なぜ暴力がいけないのか」、この映画からヒントを得て教えてあげましょう。

TO TOP