『リリィ・シュシュのすべて』

リリィ・シュシュのすべて

哀切なる青春群像劇『リリィ・シュシュのすべて』

【lily-chou-chou.com】岩井俊二監督による、世界で一番小さな映画祭。

20代までに見るべき邦画
21世紀最初の衝撃作、『リリィ・シュシュのすべて』。イジメをテーマに中学生たちの生の感覚を描く、悲しくも美しい作品です。10代のうちに見ておきたい映画の1つでしょう。 比較的近年の日本の青春映画の収穫として必ず挙げられるのが、岩井俊二監督の『リリィ・シュシュのすべて』でしょう。2001年に発表された作品で、当初はあまり注目されなかったものの、DVD化されてからは確かな評価を築いてきました。監督自身は、「もしできることなら、撮影の順番を変えてこれを遺作にしたい」ともコメントしています。

<『リリィ・シュシュのすべて』…あらすじ>
主人公は気弱な中学生で、同級生のある男から激しいイジメを受けている。金を巻き上げられ、マスターベーションを命じられ、自分が好きな女の子を呼び出してレイプに加担させられ…。しかし、主人公とイジメの主犯は、かつては親友同士。また現在でも、実は「リリィ」と呼ばれる歌手のファンサイトで、ハンドルネームでやり取りしている。 ますます凄惨になっていくイジメ…その陰で親密になっていくネット上の2人。そして迎えたリリィのコンサートで、はじめて主人公はイジメの主犯がサイトの男だったと知り…。

<圧倒的な「無感覚」が突き刺さる>
この作品には、全編を通して静かな印象が漂います。激しいイジメを描いているにも関わらず、です。まるで当人たちにはいじめている意志や、いじめられている意志が感じられていない、というように。いかにも無感覚に人を傷つけられ、また痛みを感じずに傷つけられることができる…少年少女たちの離人症めいた感覚を、実に精緻に描いています。 もしあなたが作品の中の彼らと同じ中学生ならば、きっと深い共感を得ることができるでしょう。また20代の人が観ても、当時の感覚が痛々しくよみがえってくるはずです。

<繰り返されるドビュッシー>
また、作品の中ではいくつか、クロード・ドビュッシーが作曲したクラシックが登場します。「アラベスク」「亜麻色の髪の乙女」「月光」…これらの音楽もまた、作品の静かな印象を強めていると言えるでしょう。BGMの効果もあって、悲惨な内容にも関わらず不思議と癒される映画でもある…それが『リリィ・シュシュのすべて』です。 鑑賞後には、名状しがたい悲しみが残るこの作品、ぜひ鑑賞してみてください。悲惨なイジメが増えている現代の学校の教育としても必要な映画と言えるかもしれません。

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