『わたしを離さないで』

わたしを離さないで

臓器提供が終わったら死ぬ運命『わたしを離さないで』

もしあなたが将来誰かのために命を投げださなければならない運命だったら、自暴自棄にならずに生きることはできるでしょうか?この話は、大人になったら「提供」と言って、自分の体から臓器を譲らなければならない人たちの話です。原作者はカズオ・イシグロというロンドン在住の日系イギリス人です。キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、アンドリュー・ガーフィールドが主演しました。日本でも綾瀬はるかさんを主人公にドラマ化されたので、知っている方も多いかもしれません。

<『わたしを離さないで』あらすじ>
主人公のキャシーは、親友のルースやトミーと一緒に、ヘールシャムという周りから隔離された学校で育ちます。その学校では、展覧会という奇妙な行事があり、健康診断が毎週行われていました。変わったところもありましたが、生徒たちは大切に育てられていました。けれど、キャシーたちは成長するうちに、自分たちが外の世界の人間に臓器を提供するために作られたクローンだということを知ります。そして同時に、提供が終わったら死ぬ運命にあることも知ります。

<純粋培養の生徒たち>
ヘールシャムの生徒は皆大切に育てられ、しっかり教育されます。特に芸術に関することに力を入れていて、感性豊かに育てられます。臓器提供のために育てられたとは思えないほどです。映画に出てくる学校生活は、少し奇妙なところはあっても、普通の学校と変わらない様子です。
この話の世界には、同じような「提供者」たちの学校がいくつもあります。けれど、ヘールシャム以外の施設での生徒の扱いはひどいものでした。ある意味道具とし育てられるのだから、そうなってしまう場所があるのもわかる気がします。ヘールシャムは、提供者たちの劣悪な待遇に反抗するために作られた施設でした。けれど、最後には周りからの反発のため、存続が危うくなってしまいます。

動物に例えるのはよくないかもしれませんが、提供者の状況は食肉用の家畜と似ていると感じます。いずれ殺さなければならないので、あまり直視したくない存在です。けれど、いずれ殺さなければいけなくても、生きている環境をなるべくいいものにすることはできるのではないかと考えさせられます。

<短い人生>
登場人物たちはみんな、大人になってからはわずかしか生きることができません。それに憤ることはあっても、自暴自棄になることはありません。最後まで自分の人生に意味を付けようとする姿に感動します。

提供者は、大人になってから提供が始まるまでの間、「介護人」と言ってすでに臓器を移植し始めている人たちの介護をします。キャシーは、先に提供が始まっていたルースの介護人をすることになりました。ルースは弱り切っていましたが、キャシーは最後まで、ルースが少しでも幸せでいられるよう献身的に世話をします。
キャシーたちの姿勢は、病気などで先が短いとわかったときに通じるものがあって、長く生きられないとわかったときでもこんな風に過ごしたいと思わせてくれます。

キャシーたちの環境は特別ですが、私たちも期間はもっと長いけれど、いつか死んでしまうことは同じです。登場人物たちを見ていると、日々を何となく過ごしていてはいけないなと思わせてくれます。20代までに見て、主人公たちと一緒に生きる意味を考えたい映画です。

TO TOP