『男たちの大和』

男たちの大和

本当の大人になってから味わいたい『男たちの大和』

男たちの大和 | Movie Walker

30代から味わう邦画
大人だからこそ味わって欲しい感動と感慨深さが詰まった名作『男たちの大和』。平和が続く現代だからこそ、必ず見ておきたい一本です。

<『男たちの大和』あらすじ>
世界最大最強の戦艦であった、大日本帝国海軍の大和の乗員で、わずかな生存者の内の一人であった内田一等兵曹。彼の遺灰を、大和沈没地点の仲間の元へ送るために九州へやってきた鈴木京香扮する内田の養子・真貴子。出航を誰も引き受けない中、内田の部下としてともに戦った元海軍特別年少兵・神尾と出会う。真貴子と神尾、その手伝いの敦の3人は大和沈没地点へと出航していった。
そこから場面は神尾の回想シーンへ転換し新兵時代にさかのぼる。やがて一等水兵となり大和に着任した神尾たちは、部下に対して厳しくもやさしい内田とその仲間で主計科の森脇にかわいがられ、日々の厳しい勤務をこなし実戦も経験していく。
昭和20年4月、日本海軍に残された作戦行動可能な艦艇はごくわずかだった。米軍が沖縄に殺到するに至り、神風特別攻撃隊の水上版ともいえる艦隊特攻の作戦案が現実のものとなった。戦艦大和の沖縄特攻である。
果たして、出撃翌日に米海軍機動部隊から飛び立った攻撃隊の猛攻を受ける大和艦隊。世界最大の46センチ主砲を皮切りに、高角砲、対空機銃で応戦する大和と内田、森脇、神尾等乗組員の奮戦。艦内は至る所で阿鼻叫喚の地獄絵図が展開され…。

<現在の時間と回想の組み合わせが特徴>
この作品は戦時中の描写が全編を通じてメインとなっており、戦闘シーンも多く、戦争映画に分類しても問題のないものです。しかし、戦時中と終戦直後の場面は回想シーンとして扱われている点が一般的な戦争映画とは異なります。
この手法が現代を生きる人間から見た戦争というものや、生き残った負い目を感じながら暮らす者の心情を問いかけてきます。

<兵も下士官も士官も等身大の人間である>
大和の沖縄特攻で欠かせないエピソードが本作でも描かれています。それは、大和を旗艦とする第二艦隊の司令長官だった伊藤中将が、護衛戦闘機を持たない少数の水上艦だけで沖縄を目指すことの愚かしさと、指揮官として7000人の兵を無駄に死なせるわけにはいかないと主張したこと。 それに対し、上部組織である連合艦隊の参謀長草加中将が、この作戦が勝利を度外視した一億特攻の魁であると説得し、それならと伊藤長官が受諾したことです。
後世の人間から見れば、何とも愚かしい話にしかきこえないかも知れません。しかし、その時代にはその時代の人々の苦悩があり、生きることへの執念もあったのです。本作でも、仲間が相次いで倒れて行く戦闘シーンだけでなく、全編を通して彼らが現代の我々となんら変わるところのない人間であることを表現しています。

<戦争が少なくなった時代だからこそ>
戦争を題材や舞台にした映画には、賛否両論が湧くことも珍しくありません。しかし、戦争の真っただ中に製作されるプロパガンダ作品には歴史的資料としての意味があります。
戦後に製作された映画も、主義主張ではなく純粋に人間模様、極限状態での生きざまを考えるきっかけになるでしょう。中でも本作は舞台設定が軍隊であり戦争ではあるものの、一般社会の在り方を重ね合わせて考えることのできる作品です。
戦後の年数が経つにつれ戦争映画が少なくなっていますが、こんな時代だからこそ、本作をじっくり見る意味があるように感じます。
また、技術的に精細な作り込みが可能となってから、大和の沖縄特攻を描いた作品には「連合艦隊」もありますが、本作は一部に実寸大のオープンセットを組んでおり、大和の機銃座群も細かく再現され、現実には及ばないものの「その瞬間」の姿がよく伝わってきます。
30代になって、社会の様々なことを考えられるようになったときに、じっくり味わって欲しい映画です。

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