『天皇皇后と日清戦争』

天皇皇后と日清戦争

歴史について知識が深まる『天皇皇后と日清戦争』

天皇皇后と日清戦争 | Movie Walker

娯楽的な要素もありながら、歴史について知識が深まる『天皇皇后と日清戦争』をご紹介します。当時を知らない世代である私たちが、日清戦争について理解することに役立つ名作と呼べるでしょう。


<『天皇皇后と日清戦争』あらすじ>
1894年、朝鮮の内乱を契機に半島に出兵した日清両国であったが、長年にわたり朝鮮を属国扱いしてきた清国と、朝鮮半島に清露などの影響を受けない国家が存置することで自国の権益と安全を守りたい日本の対立が決定的となる。 日清両国はついに戦火を交えるに至り日清戦争が始まった。日本国内では全国各地で戦時召集が行われ、多くの若者が出征していった。一方、明治天皇は広島に進出した大本営とともに東京を離れる。明治天皇を広島に送り出した皇后は、野戦病院の慰問などで将兵の労をねぎらう。

陸上では平壌、旅順などでの激戦を経て日本軍の損害も大きかったが清国軍は後退続きとなり、海上では黄海海戦などで清国艦隊が壊滅的打撃を受ける。 その結果、日本の勝利で講和条約の締結に至るのだが…。


<比較的公平な描写が特徴>
戦争を題材にした映画の場合、どうしても自国に都合のよい内容に傾きがちな面があります。本作においても、個々の戦闘シーンなどで若干の過剰演出と思われる部分が見受けられます。しかし、歴史的事実を曲げるような内容はなく割と公平に描かれた作品です。 このため、日清戦争について知る機会の少ない現代人にとって貴重な情報源となり得ます。


<国際社会での正義は力であるということを改めて知らされる>
歴史の教科書にもさらっと記述されている「三国干渉」ですが、本作でも当然描かれています。ロシア・ドイツ・フランスとアジアに権益を持つ3ヶ国にとって、富国強兵を推し進める日本は見過ごせない相手であり、遼東半島の割譲に異議を挟んできます。

形式的には忠告といっているものの、その実態は恫喝であり、従わなければ3ヶ国で攻め込むというものです。基礎体力に劣る日本は清との戦争で疲弊しており、ここで大国3ヶ国を相手にすればどんなことになるかは自明というもの。

自国の力がないばかりに、このような理不尽な要求に従わなければならない悲哀がよく表現されています。これが国際社会であり外交というものだと。


<アラカンこと嵐寛寿郎の明治天皇が最高の見どころ>
この映画で一番の見どころは、実はストーリーとは関係なく明治天皇役を務める嵐寛寿郎のはまり具合です。教科書でもみかける一番有名な明治天皇の肖像にかなり近い風貌となっており、見事に演じ切っています。

三国干渉を受諾する決定の場面で、国民の不満が爆発するおそれについて「国民の不満には朕がこたえる」とのセリフがあります。このときの表情にも立憲君主の大変さがよく表現されています。  

近年の若い世代にとっては馴染みのない分野かも知れませんが、殊更に特定のイデオロギーを示しているわけでもないので気軽に見ることのできる作品です。現実は映画よりもっとドロドロした物ですが、歴史を考えるうえで役に立つでしょう。

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